業界インサイト:2026年、メディアとアドテクで本当に変わること

デジタル広告業界は、流行語の登場によってではなく、これまで当たり前とされてきた前提が通用しなくなりつつあることで、大きな転換期を迎えています。AIが検索行動から業務プロセスに至るまであらゆる領域を再構築する中で、従来の業界ナラティブの限界が次第に明らかになっています。

OguryのChief Client & Partnerships OfficerであるBenjamin Lanfryに話を伺い、今後数カ月にわたりパブリッシャーや広告主が直面すると予想される課題、そしてますます無視できなくなっている業界の変化について考察しました。

AIが再び大きな注目を集める年になると予測されていますが、2026年に本当に明らかになることは何でしょうか?

私たちは長年、AIを主役として語ってきました。しかし2026年に本当に浮き彫りになるのは、業界が依存してきた「前提」や「神話」だと思います。オムニチャネル戦略、検索最適化、プログラマティックの自動化、さらには買い手と売り手の明確な役割分担といった考え方は、これまでと同じ形では成立しなくなるでしょう。

AIは、これまで固定されたものとして扱われてきた業界モデルを本格的に試す存在になります

その結果、避けられない再評価が求められることになります。

AI検索は、オープンウェブとそれに依存するパブリッシャーをどのように変えていくでしょうか?

AI検索インターフェースは、人々のコンテンツ発見のあり方を着実に変えています。チャットボットが質問に答えるたびに、本来パブリッシャーのページに訪れていたはずのトラフィックが失われているのです

従来の検索流入が減少する中で、パブリッシャーはニュースレター(Substackの急成長が好例です)、ソーシャルプラットフォーム、ポッドキャスト、モバイルアプリ、CTVなど、より広範なチャネルでの配信を強化する必要があります。

同時に、この変化はオーディエンス戦略の高度化を促し、インテリジェンスツールによって可視化される、これまで見過ごされがちだったセグメントへの注目を強めることになります。

リファラルトラフィックが減少する中で、特に専門性の高いコンテンツや調査報道を扱うパブリッシャーにとって、サブスクリプションの重要性はこれまで以上に高まります。

商品リサーチがAIインターフェース内で行われるようになる中、ブランドはどのように可視性を確保すべきでしょうか?

消費者がAIインターフェース内で情報収集を行い、場合によっては購入まで完結させるようになる中で、ブランドがその結果にどう表示されるかを理解したいと考えるのは自然な流れです。

Generative Engine Optimization(GEO)は唯一の有効な手段として注目されていますが、チャットボットを支えるブラックボックス化した仕組みにより、SEO以上に攻略が難しいのが現実です。

特にAI企業とライセンス契約を結んでいるパブリッシャーは、その立場を活かして、チャットボットの回答に影響を与え得るブランドコンテンツを提供できる可能性があります。

ただし、成功の確立された方程式や標準化された評価指標は存在せず、ブランドは長期にわたる試行錯誤と実験のフェーズに入ることを想定すべきでしょう。

エージェンティックAIが注目を集めていますが、プログラマティックにおける自動化はどこまで進むのでしょうか?

AIはすでに、業務効率化、メディアバイイング、キャンペーン管理において重要な役割を果たしています。

しかし、さらなる自動化を進めるには、RTB(リアルタイムビディング)基盤全体の根本的な再設計が必要になります。

エージェント型プロトコルの標準化に向けた取り組みは進んでいるものの、常時稼働し、ミリ秒単位で動作し、事実上ほとんど誤差を許容しないサプライチェーン全体へとスケールさせることは、依然として極めて大きな課題です。コスト、レイテンシー、効率性はいずれも、プログラマティック取引が求める規模においては、まだ十分に実証されていません。今後数カ月のうちに有望なパイロットやテストが登場する可能性は高いものの、広告取引の在り方を根本から変革するには、なお数年を要するでしょう。

買い手と売り手の境界が曖昧になる中、次に起こることは何だと考えますか?

DSPが直接的なサプライ連携へと移行し、SSPがバイイングプラットフォームを立ち上げる中で、シンプルさと透明性を志向する明確な流れが生まれています。時間の経過とともに、従来のDSPとSSPの境界は薄れ、バリューチェーン全体で競合するエンドツーエンド型プラットフォームへと置き換わっていくでしょう。

注目すべきは、この変化がパブリッシャーの強化につながる可能性を持っている点です。SSPが消費者により近い立場を築こうとする場合でも、DSPがパブリッシャーとの直接統合を求める場合でも、双方は質の高いインベントリへの直接的なアクセス、そしてパブリッシャーにしか提供できないオーディエンスシグナルを巡って競い合っています。

業界がアドネットワーク時代におけるオーディエンスのコモディティ化という過ちを繰り返さなければ、この動きは最終的に、パブリッシャーとバイサイドの間により均衡が取れ、相互に利益をもたらす関係をもたらす可能性があります。

これほど変動の大きい中で、2026年に安定をもたらすものは何でしょうか?

安定は、オーディエンスを深く理解し、その期待に一貫して応え続けることから生まれます。

流行に振り回されるのではなく、この現実に軸足を置く企業こそが、変化の先でも生き残る存在となるでしょう。

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